住友ベークライト株式会社は、半導体・電子部品・自動車・建材・包装・医療など、幅広い分野で活用されるプラスチック製品を手がける総合化学メーカーです。
静岡工場では、法令に準拠したSDSの管理やリスクアセスメントを、各部署にまたがる大規模な体制で実施してきました。そうした中で、化学物質管理業務のさらなる効率化と高度化を目指し、SDSのデータベース化を本格的に検討。その中で出会ったのが「ケミカンSDS管理」でした。今回は、導入の決め手や実際の活用方法、そして導入によって得られた具体的な効果について、静岡工場のお二人に詳しく伺いました。
中道様:私は静岡工場全体の化学物質に関する法令遵守を統括する立場で、本社の方針や最新の法規情報を各部署へ展開し、ルールに沿って運用推進する役割を担っています。静岡工場では約600名が在籍し、化学物質管理委員は20〜30名ほどで構成されています。当社では約2,000件のSDSを保有しており、それぞれに対して、社内で定めた独自のリスクアセスメントルールに基づいてリスク評価を実施しています。
守谷様:研究開発部門の化学物質管理担当として、SDSの取得・保管・更新、リスクアセスメントの実施状況の管理、そして実施も担っています。また社内業務のDXを推進するチームにも所属しております。
守谷様:社内には複数のルールが存在し、それぞれに対応する台帳や帳票が用意されています。これらのルールは、法改正によって新たに追加されたり、更新されたりすることもあります。台帳や帳票の運用業務は似たような内容が多いものの、ルールごとに個別対応が必要で、業務の手間や煩雑さが課題となっていました。
この状況を改善する方法として、SDSをデータ化して一元管理できれば、ルールごとの管理も一括で行えるのではないかと考えるようになりました。そこで、「SDS管理」「DX」「データベース化」といったキーワードでWeb検索を行った結果、ケミカンの存在を知りました。
守谷様:試薬管理システムなど、他のツールとも比較検討を行いましたが、SDSにはフォーマットの種類が多く、表記ゆれが生じやすいという特徴がありました。
そうしたSDS特有の複雑さを踏まえると、ケミカンSDS管理の「AI-OCRと人による目検を組み合わせた高精度なデータ化」と、「表記ゆれに対応する独自ルール」は非常に信頼できると感じました。
また弊社内で化学物質管理業務の理想を描いていて、実現できそうにないポイントが整理されていました。そのようなタイミングでケミカンに出会い、提供する機能が我々のニーズに合致していたため、導入はスムーズでした。
中道様:導入にあたっては、静岡工場全体でケミカンSDS管理の活用を段階的に浸透させるため、明確なマイルストーンを設定しました。まず初期の目標として、「導入後3ヶ月以内にSDS最新版の管理体制を構築」。その後の半年間で「全件のSDSをオンライン・オフライン両方で管理できる状態にする」といった目標を設けました。これにより、システム導入を目的に終わらせず、業務全体の変革を段階的に進め、その成果を目に見える形で確認できるようにしました。
補足すると、オフラインというのは、災害時にオンラインアクセスできない場合を想定して自社のローカルサーバーにもSDSを保存しておくことを意味しています。
守谷様:その他に、「各部署で管理している帳票を一つに統一すること」「リスクアセスメント業務を半自動化すること」「SDSの管理・更新を工場全体で一元管理できていること(部署間での業務の重複を防ぐ)」を目標にしていました。導入から9ヶ月ほどですが、3つとも形になってきたと思います。
中道様:SDSが更新された際にリスクアセスメントを再実施するという一連の流れが、理想ではあるものの、実際にはすべてを再実施することはできていませんでした。しかし、ケミカンSDS管理の導入後は、リスクアセスメントを半自動的に行う仕組みが整い、これまで「やりきれていなかったこと」が「着実にできるようになった」という変化が大きいです。「ゼロがイチになった」という実感があります。
守谷様:特に成果を感じているのはリスクアセスメント業務の効率化です。ケミカンSDS管理のデータ形式カスタマイズ*を活用して、GHS区分と法令区分のデータ取得がワンクリックで取得可能になったことにより、化学物質ごとの情報抽出と弊社独自のリスクアセスメントの定型様式への反映が瞬時に完了し、従来手作業で数時間かかっていた作業が数分に短縮されました。
*データ形式カスタマイズ:データベース化したSDS情報(項目)をご希望のフォーマットで出力するオプションメニュー
中道様:特に工夫した点は、タグ機能の活用とその標準化です。ケミカンSDS管理に登録するすべてのSDSに対して、「部署名」や「使用場所」をタグとして必ず付けるルールを整備しました。この運用により、重複登録の防止や、使用停止となった化学物質の把握がスムーズに行えるようになりました。たとえば、タグが付いていないSDSは原則として「現在使用していない物質」と見なすことで、棚卸し作業をほぼ自動化することができています。
また、新しい法令改定があった際には、キーワード検索で対象となる物質を抽出し、該当する使用部署へ迅速に注意喚起できる体制も整いました。
*タグ機能:SDSに対して任意のタグを付与できる機能
守谷様:各SDSに付与されている個別のURLも、業務の中で活用しています。各部署ではそれぞれ帳票を管理していますが、そこにSDSのURLを記載することで、自部署で使用している化学物質や化学品のSDSに、すぐにアクセスできるようになりました。毎回ケミカンSDS管理にアクセスしてSDSを検索する手間が省けるため、非常に便利だと感じています。
中道様:ケミカンSDS管理を導入して、後悔は一切ありません。導入時には、ケミカンの導入支援チームの皆さんから非常に手厚いサポートをいただきました。運用が始まると、どうしても確認事項や質問が次々に出てきますが、その一つひとつに対して、2〜3日以内というスピード感で対応していただけたのは本当に助かりました。もちろんコストはかかりますが、それを上回る価値があると実感しています。SDS管理に課題を感じている企業様には、ぜひケミカンの仲間になっていただきたいと思います。
守谷様:「紙をなくしたい」などの漠然とした課題意識では、社内の理解を得るのが難しいかもしれません。化学物質管理の業務全体を見渡し、課題を明確にすることが重要です。そのうえでケミカンSDS管理の必要性を判断すれば、スムーズに導入できるのではないかと思います。
中道様(静岡工場 環境管理部 主査)
守谷様(HPP技術開発研究所 主査)