創業1924年、大阪市に本社を置く総合試薬メーカーのキシダ化学株式会社は、試薬・化成品の製造・販売を中心に事業を展開しています。
2023年の労働安全衛生法(以下、安衛法)改正を機に、リスクアセスメント対応を強化する必要に迫られる中、従来の手作業中心のSDS管理とリスクアセスメント業務には限界を感じており、全社的な課題意識のもと「ケミカンSDS管理」(以下、ケミカン)の導入を決定。現場主導での推進と、システム導入後の定着活動により、業務負荷の大幅軽減、SDSのデジタル管理体制の確立という成果を実現しました。
本記事では、導入前に抱えていた課題から、導入理由、効果、今後への期待まで、お話を伺いました。
島村様:私は化学品安全管理統括部に所属しており、全社的なコンプライアンス活動を担当しています。今回の労働安全衛生法改正に伴い、徳島工場や兵庫県の三田事業所、茨城県のつくば事業所の生産拠点と連携し、安衛法改正への対応を進める役割を担いました。
太田様:私は徳島工場の品質管理グループに所属しており、島村さんたちの部署から法律改正の情報を受け取り、現場での取り扱い状況の確認や、必要な法令対応の実施を担当しており、今回の安衛法改正においてはグループ内のリスクアセスメントの取りまとめを行っております。
島村様:リスクアセスメント自体は従来から行っていましたが、現場に任せきりのところもありました。改正を機に、現場の実施状況の把握、継続的に実施できる体制や方法の見直しの必要性を強く感じました。
ちょうど3〜4年前から安衛法改正に関する情報は追いかけていましたが、いざ改正に向けた準備を始めると、リスクアセスメント以外にも対応しなければならないことが現場に多くあり、限られた時間の中でリスクアセスメントに対する現場負荷が想像以上に大きいと気づきました。
太田様:当初はコントロールバンディングを使った簡易的なリスクアセスメントで対応していました。しかし、法改正によって、より厳密な対応が求められることになり、CREATE-SIMPLEで実際に200枚くらいのSDS情報を入力してみて、作業の膨大さに直面しました。
現在、自部署は化学物質関連の業務に携わる社員が5名いますが、当時は3名でうち1名がリスクアセスメント担当でした。ほかのメンバーは、保護具担当等、別の役割を担っていましたので、現状のやり方では到底回しきれないと対応しきれないと痛感していました。必要な場合は全員がCREATE-SIMPLEを使えるようになって、全員で対応することも検討していました。
また、CREATE-SIMPLEを使ってみて、SDSの最新版管理という観点でも課題を感じていました。自部署では、インターネット上で入手できるSDSに関しては、そのSDSのURLをエクセルで一元管理をして、都度チェックするという対応を取っていました。そのため、最新版に改定されたのかどうか把握しきれていないという状況でした。
島村様:2023年9月頃に、花王さんの導入事例が紹介されたセミナーに参加したのがきっかけです。当時、安衛法改正に関するセミナーが様々なところで行われており、開催情報を社内共有し、関係者で参加し、継続的に情報収集を行っていました。ケミカンさんのセミナーに関しては生産拠点の事業所でリスクアセスメントに課題意識を持っていた数名が興味を持ち、一緒に参加しました。そこから製品デモのご案内をいただき、太田を含めた徳島・三田・つくばの3事業所の担当者に声をかけて、無料トライアルに参加しました。
島村様:最初のデモ後、すぐに導入というわけではありませんでした。当時はCREATE-SIMPLEとの連携も限定的だったため、現場からの意見より、得られるメリットが少ないことから当初の導入は見送る判断をしました。一方で、このトライアル期間中に5件の改善が実装されていることから、ユーザーからの要望を抽出し実現していく力、そしてフットワークの軽さより、数か月後には今より良いシステムになっている可能性がある、という意見もありました。そこで、ケミカンのVer Upの把握やセミナーへの参加は引き続き行っていました。
そして2024年7月頃、太田から「CREATE-SIMPLEとの連携が進化したので、やはり導入したい」と強い希望が上がってきました。このタイミングで、改めて本格的に導入に向けた社内調整を始めました。
それまでは、法改正への対応を乗り越えられるか不安もありましたが、このように現場から導入の意思表示をしてくれたのは心強かったです。
また、導入後の支援体制のサービスで「現状の課題とビジョンの再確認、社内の推進体制の決定」をサポートいただいたことも導入がスムーズにいった理由の1つだと思います。
太田様:導入を提案するにあたって、徳島工場内の製造、研究、品質管理それぞれの部署から意見を集めました。データ化による業務時短、情報の正確性向上、将来のSDS最新版管理への期待など、現場視点でまとめた資料を作成し、これを工場長へ提案しました。現場からのニーズが明確だったこともあり、工場長に加えて社内でもスムーズに承認を得ることができました。
太田様:徳島工場の製造グループ、研究開発グループ、品質管理グループで導入しています。
太田様:SDSがデータベース化されたことで、最新版の確認や情報管理が格段にしやすくなりました。以前は紙やエクセルを使って手作業で管理していたため、最新版かどうかも分からない状態だったのですが、今はケミカン上で一元管理できています。
また、ケミカンで出力したデータをCREATE-SIMPLEに取り込むことで、リスクアセスメント業務が飛躍的に効率化しました。紙を印刷して目視確認する作業もほとんどなくなり、リスクアセスメントの複数工程のうちの初期調査においては、30%ほど効率アップされたと思います。
あとタグ機能が便利です。CREATE-SIMPLEの最新バージョンでは作業単位で物質をまとめリスク判定できるようになったので、リスクアセスメント対象物質に作業単位でタグを付与することで業務効率が大幅に向上しました。現場での作業もスムーズになり、安衛法改正対応に向けた体制が確実に整いつつあると実感しています。
*タグ機能:SDSに対して任意のタグを付与できる機能
島村様:やはり、SDS最新版の自動配信機能には非常に期待しています。現場でタイムリーに最新版を入手するのは難易度が高く、常に最新版のSDSが管理できている状態となれば、必要に応じたリスクアセスメントの再実施以外にも、現場での化学物質管理を的確に行うことができます。
また、関連法規に関する情報も、さらに幅広くカバーしてもらえるとありがたいです。企業によっては化学物質関連法規に関して専任の担当者がいないケースも多いため、システム側から積極的にサポートしてもらえると助かります。
太田様:今後も、現場での使いやすさを維持していただきたいです。さらに、作業者が直感的に使えるシンプルモードなどがあれば、より幅広い社員に使ってもらえるのではないかと期待しています。